地に潜む者②

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「失礼します」 明仁に向かって一礼すると、優一は校長室の扉を静かに閉めた。 「はぁー……」 途端に、稔が大きく息を吐く。 「なんか無駄に疲れたぜ……」 「本当ですね」 どうやら千歳も同じ気持ちだったらしい。 冷や汗でもかいていたのだろうか、額をぬぐった。 「なんというか、貫禄が違いますよね。さすがは学校を統べる人だなぁと」 「そうか?俺的には普通のおっさんだけどな」 優一は平然を通り越して緊張感の欠片も無い。肝が据わっていると言えば聞こえは良いが、礼儀をわきまえてないと言えなくもない。 「ま、校長先生も言う通り、明日から夏休みだ。しばらくはまったり出来るだろう」 「本当にそうなの?」 操は悪戯っ子のような笑みを浮かべて優一を見上げる。 「補習とかあるんじゃないの?」 「どうやらお前は相当俺のことを見くびっているらしいな」 優一は操を訝しげに睨み返す。 「そりゃあ錬金学に関しては万年ビリだがな、そのツケはその都度払ってきてる訳よ。つまり俺には、平穏かつ充実した夏休みを送る資格がある――」 「ほほぅ。本当にそうと断言出来るのか?」 後ろから、聞き慣れた声がした。 「……と思うんですけど、どうでしょう?」 語尾を若干弱めながら、優一は恐る恐る振り返る。 「無いから言ってるんだが?」 水野明子は不敵に笑っていた。 白衣をはためかせ、腰に手を当てている。 優一には悪魔の化身に見えたに違いない。
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