真夏日の呼び出し

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夏休みが始まって一週間ほどが過ぎた。 暑さは日に日に増していて、テレビでも連日猛暑だと騒いでいる。恐らく誰しもが地球温暖化を憎んでいるだろう。 「う~んと……」 そんな暑さの中でも、優一は負けじと宿題に勤しんでいた。 「これなら……あれ?答えが出ない」 夏休みともなれば、その宿題の量は膨大なものになる。 それを毎日コツコツと切り崩していくか、一気に崩落させるかは個々によって様々だが、優一の場合は前者に当たる。 「……ああ!そういうことか!」 錬金学に関しては補習常連の彼だが、もともと頭は悪くない。故に宿題も真面目にやっている。 もっとも優一がやらなければ、夏休み終盤に泣き付いてくる某友人が困ることになるのだが。 「よし。今日の分は終わり!」 ぱたりと問題集を閉じる。 「しかしあっついなぁ」 続いて机の隅にあるうちわを手に取った。 「あー。極楽極楽」 うちわからそよぐ風に、優一の顔が恍惚にゆるむ。 その程度の風で極楽の境地に至るのだから、足元で回っている扇風機は絶大な効果を上げていることだろう。 塚越優一はとてもエコロジーな人間である。 「お?電話?」 不意に机上の携帯電話が鳴りだした。 「はいはい今出ますよっと」 即座に手に取り、通話ボタンを押す。 「もしもし」 『おーす塚越。元気にやってるか?』 聞き覚えのある声。 それと同時に、一番聞きたくない声でもあった。 「……水野先生」 嫌な予感がした。
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