真夏日の呼び出し

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「はぁー……」 一体何度目のため息だろう。しかし出るのだから仕方ない。 太陽を遮っていた雲はどこかに流れ、優一は直射日光をガンガン浴びている。 「にしたってキツイ……」 ついで言うと、彼は今学園へと続く坂を上っている最中だ。それがまた、彼の憂鬱さを助長させていた。 「はぁー……」 「よっ」 突然背中を叩かれた。 「いてっ」 続いて何かが脇を走り抜ける。 「優一じゃない。お久しぶり」 「……」 とりあえず、半袖のYシャツを着ている。ついでに、明神学園指定のスカートを穿いている。ということは、明神学園の生徒なのだろう。 「どうしたの?こんな所で」 手を後ろで組んで、顔を覗き込むように見上げてくるその少女は、どうやら自分のことを知っているらしい。 首を傾げて微笑んでいる顔も、どこかで見たことがあるような無いような。 しかし、ポニーテールの友人など居ただろうか。 「……操?」 とりあえず声の感じからすると、そんな印象を受けた。 「なんで疑問形なのよ?」 どうやら正解のようだ。 「悪い。髪型が変わってたから気付かなかった」 「ふぅ~ん。そんなに変わるものなんだ」 風が吹き、ポニーテールを弄ぶ。 それを押さえる操の姿が、何だか眩しく感じられた。 「あぁ。どこぞのお嬢様が元気ハツラツ少女にクラスチェンジしてるぞ」 よく似合ってるとは、あえて言わなかった。
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