真夏日の呼び出し

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「それにしても、いきなりポニーテールなんてどうした?」 歩きながら優一は訊く。 「長髪は暑いのよ。お手入れも大変だし」 操は弾むように歩く。 ぴょこぴょこと動く髪が幼さを醸し出していた。 「だったらわざわざ伸ばさなきゃいいのに……」 「あなた、女心ってものを分かってないわねぇ」 操は人差し指を振った。 「髪は女の命。それをばっさりいくなんて考えられないわ。だから、どんなに大変でもお手入れするの。お分り?」 「分からん」 さして興味もない風に、優一は言った。 「まぁ女が大変な生き物ってのは分かった」 「当たり前でしょ。一応お嫁さんになるんだから」 「……」 優一は片眉をぴくりと動かし、操を見下ろす。 「まぁ、貰い手……いや。拾い手がありゃいいな」 言ってはいけない一言。 優一はそれを理解していなかった。 「あんたねぇ……」 操のポニーテールがふわりと持ち上がるように動く。 重力に逆らった、あまりに不自然な動き。風が吹いたのではない。 操が風を起こしたのだ。 「ほんっとに、女心ってものを分かってないわね……」 「あー。こりゃやばいかね」 言うや否や、優一は脱兎のごとく駆け出した。 「待てええええええっ!!」 その後を無数の風の刄が追っていったのは、言うまでもない。
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