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「ふぅ……。余計な体力使わせるなよ」
「はぁ……はぁ……。それはこっちの台詞よ!!」
結局、二人の追い駆けっこは学園まで続いた。
坂を駆け上がり、校門を駆け抜け、昇降口に入った所で足を止めた。
「ところでさ、優一」
手でパタパタと風を送りながら、操は訊く。
「どうして学校に来たのよ?」
「水野先生に呼び出された」
優一はYシャツをズボンから出し、パタパタと風を送り込んでいる。
「え?あなたも?」
操は扇ぐ手をぴたりと止めた。
「あなたも?」
優一は目を丸くしている操を見た。
「もしかしてお前もなのか?」
「うん。今から来いって」
どうやら優一と同じような理由で呼び出されたらしい。
「一体何を企んでるんだろうな……」
優一の頭には、ニヤリと笑う明子の姿が浮かんでいた。
それはまさに、悪魔の化身。
「うおっと」
突然の身震いは、果たして汗で濡れたせいなのだろうか。
「まぁ、行けば分かるでしょ。早く行きましょ!」
操が優一の腕を引っ張る。
「なぜお前はそんなに無邪気でいられるんだ……?」
恐らくは、明子の真の姿を知っているか知っていないかの差。
そうであると思いたい。
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