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「あんたねぇ……」
燃えたぎる怒りを全て込め、操は素早く踏み台を蹴りぬいた。踏み台は倒れることなく水平に滑空し、反対側の本棚にぶつかって着地した。
もしこの場にダルマ落としの達人が居たならば、弟子入りを志願したに違いない。
「おわっ!」
一瞬のうちに足場を失った優一は、直立の姿勢のまま地面に落下した。
しかし足場が悪い。
無造作に積まれた本に足を取られ、優一は尻餅をつくようにひっくり返った。
「いてて……。少し乱暴すぎや――」
上体を起こした優一は、さらに戦慄した。
目の前に居るのは、腰に手を当て、仁王立ちの操。いや、仁王そのものか、あるいは凌駕しているかも知れない。
白い歯を噛み締め、こめかみの辺りには青筋が立っている。熱気というか、凄まじい殺気がビリビリと伝わってくる。
「あー……。操ちゃん?とりあえず落ち着こう。ね?」
「聞く耳持たんっ!!」
なんの前ぶれもなく、操は突風を巻き起こした。
「ぐえっ!!」
あまりに突然のことだったので優一は対処出来なかった。
足元の本もろとも風に飛ばされて背後の壁に激突。文字通り本に埋まった。
「今日という今日は許さないわよ!あんたの存在をあの世まで吹き飛ばしてあげるわっ!!」
「あー!こりゃ私じゃないか!」
操がさらなる鉄槌を下そうとした時、明子が驚愕の事実を口走った。
『ええええええ!?』
操と優一の声が見事にハモッた。
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