真夏日の呼び出し

13/20
前へ
/396ページ
次へ
「あんたねぇ……」 燃えたぎる怒りを全て込め、操は素早く踏み台を蹴りぬいた。踏み台は倒れることなく水平に滑空し、反対側の本棚にぶつかって着地した。 もしこの場にダルマ落としの達人が居たならば、弟子入りを志願したに違いない。 「おわっ!」 一瞬のうちに足場を失った優一は、直立の姿勢のまま地面に落下した。 しかし足場が悪い。 無造作に積まれた本に足を取られ、優一は尻餅をつくようにひっくり返った。 「いてて……。少し乱暴すぎや――」 上体を起こした優一は、さらに戦慄した。 目の前に居るのは、腰に手を当て、仁王立ちの操。いや、仁王そのものか、あるいは凌駕しているかも知れない。 白い歯を噛み締め、こめかみの辺りには青筋が立っている。熱気というか、凄まじい殺気がビリビリと伝わってくる。 「あー……。操ちゃん?とりあえず落ち着こう。ね?」 「聞く耳持たんっ!!」 なんの前ぶれもなく、操は突風を巻き起こした。 「ぐえっ!!」 あまりに突然のことだったので優一は対処出来なかった。 足元の本もろとも風に飛ばされて背後の壁に激突。文字通り本に埋まった。 「今日という今日は許さないわよ!あんたの存在をあの世まで吹き飛ばしてあげるわっ!!」 「あー!こりゃ私じゃないか!」 操がさらなる鉄槌を下そうとした時、明子が驚愕の事実を口走った。 『ええええええ!?』 操と優一の声が見事にハモッた。
/396ページ

最初のコメントを投稿しよう!

90796人が本棚に入れています
本棚に追加