真夏日の呼び出し

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「馬鹿言ってんじゃないわよ。せめてこれくらいは持ちなさい」 操は優一の本の上に、足元の本をひょいひょいと乗せていく。 「ちょっ、限度ってものを知れ!」 本の束はいつの間にか優一の遥か頭上に達していた。 うまくバランスを取らなければ、一瞬のうちに崩れてしまうだろう。 「あの、マジで重たいんですが……」 「よいしょっと」 おずおずと言う優一を路傍の石の如く無視し、操は自分の前に僅か残った本を持ち上げた。 「ほら、さっさと行くわよ」 「無茶言うなよ……」 そして操はキビキビと、優一はヨロヨロと錬金学研究室を出ていった。 「まったく。騒がしい奴らだな」 明子はやれやれと肩をすくめた。 「……」 研究室の中に風が吹き込む。机に置かれたノートがパラパラと弄ばれる。 「……もうすぐ帰るからね」 明子は写真を写真立てから出すと、そっと白衣のポケットに入れた。 「さてと、私も片付けをしよう」 弄ばれて止まったページ。 そこには、ひまわりのように笑う少女の写真が挟まっていた。
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