真夏日の呼び出し

18/20
前へ
/396ページ
次へ
「まさか水野先生が結婚していたとはねぇ」 「ほんと。びっくりしちゃった」 陽炎が立ちこめる道を二人は歩く。日はいくらか傾いてきたとはいえ、暑さはまだまだ残っている。 「一体どんな手管を使って旦那さんを陥れたんだろう」 「……あなた、本気で言ってるの?」 二人の手にはスポーツドリンクのペットボトルが握られている。明子が今日の報酬としてよこしたものだ。 「結婚かぁ。私もいつか、いい妻、いい母親になりたいなぁ」 空を仰ぐ操。 今日の彼女はどこまでも乙女チックだった。 「貰い手……いや、拾い手があったらな」 優一はスポーツドリンクを呷る。自分が無意識のうちに乙女心を傷つけていることを、彼は知らない。 「今日はやけに突っ掛かってくるわね。なんか恨みでもあるわけ?」 「別に。俺はあくまでも事実を言ってるだけだ」 どこまでも平静な優一。 少しだけ、動揺させてみたくなった。 「ふーん……。まぁいいわ。どうしてもダメならあなたに拾ってもらうから」 刹那、優一がぴたりと足を止めた。 「……」 そしてまじまじと操を見つめる。
/396ページ

最初のコメントを投稿しよう!

90796人が本棚に入れています
本棚に追加