90796人が本棚に入れています
本棚に追加
「な、なによ?」
まるで自分の心に探りを入れているような、そんな目だった。半分冗談のように言った言葉だが、もしかしたら優一は本気と捉えてしまったのだろうか。
一抹の不安が操の頭をよぎった。
「……」
しかし優一は無言のまま、突然手を伸ばしてきた。
(な、なに?どうしたの!?)
操は反射的に目を瞑った。
一体なにが起きたのか。よもや優一が凶行にうって出たのか。魔法を使おうにも緊張から使えない。
(だ、だめ!)
半ば冷静さを失った操の耳に、
「お前、熱でもあるのか?」
という声が飛び込んできた。
「……へ?」
額には柔らかい感触。
恐る恐る目を開けると、優一が自分の額に手をあて、心底心配そうな顔をしていた。
「さっきから変なことばっか言って……。無理はするもんじゃないぞ?」
「……」
前言撤回。
優一は、たとえ太陽が西から昇ったとしても、凶行に及ぶことなどない。
最初のコメントを投稿しよう!