真夏日の呼び出し

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「馬鹿っ!」 操は憤然と優一の手を払い除けると、そのまま前に向き直って大股で歩き始めた。 「よく分からん奴だなぁ……」 払い除けられた手で頭を掻き、優一は荒々しく揺れるポニーテールの後に続く。 「ちょっと待てよ。操」 「どうせ私は女らしくないわよっ!!」 「誰もそんなこと言ってないだろうが」 こちらを見ようともせず、操は足裏を地面に叩きつけるようにして歩いている。 どうやら完全に機嫌をそこねてしまったらしい。 「はぁー……。女心は夏空のように、そう簡単にはすっきり晴れ上がらないってことかねぇ」 仕方なしに歩調を速め、操の隣につく。 「誰のせいよ!誰の!!」 一声叫ぶと、操は歩を止めて俯いてしまった。 「今度はなんですか?」 もうウンザリという口調の優一。やはり自分が原因であることに気付いていないらしい。 「……優一は」 ぽつりと、操が呟く。 「優一は、女の子らしい女の子が好きなんでしょ?」 とても切なげな、でも拗ねたような、それでいて今にも泣きだしそうな、そんな声だった。 彼女は答えを求めている。 分かっていたが、優一は答えようとはしなかった。 「なんで俺が出てくるのか分からんが……」今度は優一が背を向けた。 「くだらないこと言ってないで早く帰るぞ。いい加減干上がっちまうからな」 手に持ったペットボトルで肩を叩きながら、優一はゆっくりと歩き始める。 「……くだらなくなんか、ないんだから」 遠ざかる気配を肌で感じつつ、操は誰にも聞こえないような小さな声で呟いた。 一陣の風が吹き、操の髪を撫でる。 吹き過ぎる刹那、風は操の目に光るものをそっとぬぐい去っていった。
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