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「!?」
千歳はびくりと体を震わせて声のした方を向く。
恐らく通路の向こう側、本棚の裏に誰かが居る。
「つ、塚越君。あそこに誰か居るみたいですよ……?」
先の想像がフラッシュバックする。
やはり得体の知れない何かが作り出されてしまったのか。
「うん。水野先生かな?ちょっと見てみるよ」
怖がる千歳と対照的に、優一は落ち着き払った様子で本棚に歩み寄る。
「ま、待って下さきゃっ!」
急いで優一に駆け寄ろうとした千歳は、本に足を引っ掛けて転んでしまった。
「いたた……」
「おいおい。大丈夫?」
優一が千歳の手を引っ張って立ち上がらせる。
「足場が悪いから気を付けなきゃ」
優一はそのまま手を取る形で千歳を自分の傍までエスコートした。
「怪我とかない?」
「は、はい……」
「そ。んじゃ、改めて」
千歳が顔を赤くしていることに気付かずに、優一は本棚の裏を覗き込んだ。
「……なにやってんすか」
途端、優一の声に呆れが交じった。
「?」
優一の反応を不思議に思った千歳は、本棚の裏を恐る恐る覗き込んだ。
「み、水野先生!?」
「はろ~……」
そこには、仰向けの状態で本に埋もれた明子の姿があった。
「ど、どうしたんですか!?」
「いやぁ。本棚の整理をしようと思ったら、突然落石が起こってな。私でも避けられなかったよ」
笑いながら、明子は本の隙間から腕を伸ばした。
「というわけで、お前たち、ちょっと引っ張りだしてくれ。私一人の力じゃどうにもならん」
「まったく。世話の焼ける人ですねぇ」
優一はため息をつきながら、明子の腕をしっかりと握った。
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