2/38
前へ
/396ページ
次へ
男が一人、電車に乗り込む。 車内は満席。立っている乗客もごった返している。 浴衣姿の乗客が多い中で、Tシャツにジーンズ姿のその男はある意味目立っていた。 しかし、周りの人間はそんなことは気にしない。 屋台を回ろう。 射的をしよう。 花火は特等席で。 目下気にすることは、そんなことだ。 だから、男のことなど気にしない。気付かない。 『間もなく発車します』 ジーンズのポケットに『狂気』を孕ませた男を乗せ、電車はゆっくりと走り始めた。
/396ページ

最初のコメントを投稿しよう!

90796人が本棚に入れています
本棚に追加