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彼女の目的はただ一つだったのに、それを寸前で邪魔されたのだ。
怒っても仕方のない状況であるが、彼女はショックの方が先行していた。
「ふぅん。面白そうじゃない」
一方、操は誰よりも早くくじを引いた。印が付いているだろう根元は見せないようにしている。
「せっかくのお祭りだもの。こういうのも楽しいわよね」
操は左の袖で口元を隠し、妖艶で挑発的な視線を千歳に送った。
(……むっ)
それは操からの挑戦状。
あなたとは違うの。
私は、余裕のある女。
そう言いたげに千歳の目には映った。
当然自分も負けるわけにはいかない。
「そーですね。楽しまなければなりませんよね」
大股で稔に歩み寄り、奪い取るようにくじを引く。そして操に視線をぶつけた。
(うわっ!怖っ!!)
稔は彼女らの視線が衝突するところに火花が飛び散っているのを感じた。
「よく分からないが……。二人がやるなら俺もやろう」
最後に優一が、二人の間に割って入るようにしてくじを引いた。
「んじゃ、みなさん準備はよろしいか?」
稔が三人を見渡す。
「赤い印が入っているのがペアだ。誰と誰がペアになっても怨みっこなしだぜぃ!」
稔がくじを逆さにする。
それに他の三人も続いた。
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