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(……!?)
あまりに意外な反応。
まるで余裕のある、大人の女性のような。
こんな反応をされると、意地悪くした自分が嫌な女のように思えてくる。
「っ!」
どうやら顔をしかめるのは操の方だったようだ。
「んーで、そっちの方はどうだったの?」
今度は優一が後ろに手をつきながら訊く。
「はい。とっても楽しかったですよ!」
「立花さんはいい子だから、無理矢理奢らせるなんてことはしなかったしな。二人で屋台巡るなり、露店覗くなり、楽しかったぜ!」
二人が顔を見合わせて笑う。まるで先程のことは無かったように。
申し合わせたわけではない。さっきのこととは別に、本当に楽しかったのだろう。
「くぅ。俺も立花さんと回りゃ良かったおわぁっ!!」
突然ついていた手が払われる。
支えを失った上体は後ろに倒れ、優一は後頭部を地面にしたたか打ち付けた。
「いったー……。貴様、何をするか」
優一はその体勢のまま手を払った張本人を睨み付ける。
「ふん。いい気味ね」
睨まれた操は顔をそっぽに向けてしまった。
半ば八つ当りに近い行動ではあったが、彼女は謝る気は毛頭ないらしい。
「わけが分からんなぁ」
そっぽを向かれてしまってはどうしようもない。
優一はため息混じりに体を起こした。
「優一ぃ。もー少し空気読もうぜぇ」
稔が馴々しく肩を掛けてくる。
「寄るな触るな暑苦しい」
……ドーン
川の中程から、鈍い爆発音。
祭りのクライマックスを告げる、合図。
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