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「今年の祭りも終わりかぁ」
稔が名残惜しそうに言う。
「去年は優一と二人だったけど、今年は桐生さんと立花さんが居たから楽しかったな」
女性陣二人の目的は、当然ながら稔ではない。たが、彼にとってそんなことは些細な問題らしい。
「来年もまた来たいですね」
千歳は空を見上げたまま言った。
「でも来年は受験生なのよね。私たち。そんな時間あるかどうか……」
遠いことだと思っていると、あっという間に迫ってくる。
操は深々とため息をついた。
「ま、俺はもう決まったようなもんだから、来年も遊んで過ごす痛っ!!」
成績で言えば優一が一番下。学年トップスリーと比べるのはあまりに酷だが、それでも彼は能天気というか、楽観的というか。
操がどつきたくなったのも無理はない。
「あんたねぇ、もう少し危機感ってものを持ちなさいよ!」
「えー。だって父さんは快く了承してくれているし、神武大学だって権威の頼みを無下には出来ないだろ?」
「だからって……」
「はいはい。こんなとこでそんな話しないの」
言いつつ稔は立ち上がる。
「ところで、これから二次会ってことでカラオケでも――」
『きゃあああああああああ!!』
『うわあああああああああ!!』
夜の帳を切り裂く悲鳴が聞こえたのは、その直後のことだった。
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