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他の人間などまるで気にせず、一直線にこちらに向かってくる男。
次の獲物は、自分たち。
「来るんじゃねぇっ!!」
稔が火炎弾を投げる。
大きさこそバレーボール程だが、輝き方は太陽のそれと同じ。エーテルをそれだけ使ったという証拠だ。
俊足にして大火力を誇る火炎弾は、走ってくる男を真正面から迎え撃った。
命中と同時に爆煙が上がる。
「やったか!」
常人なら、無事では済まない。
「!?」
しかし男は、その爆煙の中を駆け抜けてきた。
「な、なんで効かないんだよ!?」
防御した様子はまるでない。たとえ防御されたとしても、柔な魔法では防ぎきれないくらいのエーテルを溜め込んだ。
稔はただただ驚くしかない。
「これなら!」
「来ないでぇ!!」
続いて操が空気弾を、千歳が楕円にまとめた水の刄を撃つ。
どちらも人間を殺しかねない攻撃である。
しかし、男はそれすらもものともしない。
「そんな!ありったけのエーテルを放ったのよ!?」
男は尚も迫ってくる。
「……そうか」
唐突に優一が口を開いた。
「稔、二人を連れて逃げろ。あいつは……『無』を持っている」
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