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男の気持ちは、痛いほど分かる。実際自分だって辛い目にあってきた。なんでこんな能力を持っているんだと憎んだこともあった。
人と変わってることが、こんなに大変だとは思わなかった。
しかし、だからといって人を傷つけていい理由にはならない。傷つけたところで、何も変わらない。
『誰も彼もがお前と同じ考え方を出来るわけじゃない』
明子の言葉が頭をよぎる。
彼女はこういうことを言いたかったのだろうか。
「さぁどけ!お前の分まで、俺が仇を取ってやるよ!」
仇。
そんなもの、取ってもらわなくていい。
もし昔の連中が馬鹿にしてきても、ぶっ飛ばせるだけの力が自分にはある。
この男は、憎しみを昇華する方向を間違えた。
正しい方向に導ける自分が居たら。
彼がそういう考え方の出来る人間だったら。
周りの人間がもっと優しかったら。
彼がもっと強い人間だったら。
『無』というものが無かったら。
彼の人生は、変わっていたに違いない。
「……自首しろ。そうすれば、多少なり罪は軽くなる」
「馬鹿言え。なんでそんなことしなきゃならないんだ」
どうやら良心というものは微塵も残っていないらしい。
「……そうか」
だったら、取るべき行動は一つ。
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