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「ん?なにをする気だ!」 優一は歩く。 男に向かって。 男を真っすぐ見据えて。 目に光るは、憤怒、激昂。 少しずつ男に近づいていく。 「く、来るな!来るんじゃねぇ!」 その眼光に射竦められる男。 恐怖感を振り払うようにナイフを突き付ける。しかし、それでも優一は止まらない。 「来るなっつってんだろうがぁ!!」 顔前まで迫った優一に向かって、男はナイフを振り下ろす。 優一は怯むことなく、その刄を左手で受け止めた。 「な、なに!?」 刄を掴む左手。 鮮血が腕を伝い、肘から地面に滴り落ちる。 痛くない筈がない。 それでも優一は表情を変えることなく、刄を握り締める。 「は、放せ!放しやがれ!」 男はナイフを引き抜こうとするがびくともしない。 ナイフを動かせば動かすほど、傷口はより大きく開き、出血は多くなる。 「……この」 眼光がより一層鋭いものになる。 握り締めた右の手が震えだす。 「馬鹿野郎がぁっ!!」 感情の発露。 それと同時に、優一は男を殴り飛ばした。 男は悲鳴を上げる間もなく数メートル飛び、意識を失った。 「……なんで、そんな考え方しか出来ないんだ」 左手に残ったナイフを落とす。 間もなく警察と救急隊が駆け付けた。
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