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「呼び出してすまなかったね」
桐生明仁は四人を校長室の中に促した。
「いえいえ、構いませんよ」
先頭は優一、続いて操、千歳、最後に稔が続く。
優一と操は慣れたものだが、千歳と稔はまだ緊張しているようだ。
「座ってくれ」
明仁は四人を来客用ソファーの上座に案内し、自分は下座に座った。
「それで、用件と言うのは?」
単刀直入に操が訊く。
明仁は操の祖父であるが、ここでは一応校長と生徒。
いつものように『お爺ちゃん』と呼んだりはしない。
「ふむ。それでは話そうか。みんなもだいたい察しはついていると思うけど」
明仁の口調が真剣なものに変わる。
「最近また、精霊が活動しているらしい」
精霊。
意志を持つエーテルの集合体。
魔法が意志を持ち、闊歩しているような存在だ。
明神学園創設の時、この地に根付いた精霊を、創設者たちが封印した。しかしその封印が弱まり、明神学園内で騒ぎを起こした。
「唐突ですね。最近はすっかり鎮静化していたのに」
悪戯と言えば実に可愛らしいが、精霊は人間を遥かに凌駕するエーテルを持つ。
さらには封印されたことの憎悪も持ち合わせているため、放っておくわけにはいかない。
「で、どんな被害が?」
優一らはこれまでに、風の精霊シルフと土の精霊ノームを倒している。明仁の魔法教育という方針の元だが、一般生徒は知らないことだ。
ノームを倒して以来精霊の活動はぱたりと絶えていたが、どうやら居なくなったわけではないらしい。
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