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「ふむ。被害と言うには少々あれなんだが……」
途端に明仁の歯切れが悪くなった。
「学校の裏山に溜め池が出来たのは知ってるね?」
「えぇ。俺が地下水を噴射させたから出来たあれですね」
ノームを倒すとき、優一は洞窟の地下に溜まっていた地下水を利用した。
それはノームが出入口を塞いだことによって逃げ場を失い、優一らが戦っていた凹地に溜まった。
かくして明神学園の裏山には一夜にして巨大な溜め池が形成されたのである。
「知っての通り、あそこは濁って澱んでいる。流れも何もないからね」
その溜め池は藻などが発生し、決して清潔とは言えない。
なお、今年明神学園を悩ませた蚊の大量発生の件もこの溜め池が片棒を担いでいるのだが、それはまた別の話。
「そんな汚い水が、だ」
明仁は右手で何かを爆発させるような仕草をした。
「昨日様子を見に行って驚いたよ。何の濁りも澱みもなく、透き通っていたんだ。底まで見通せる程に、ね」
一同の間に緊張が走った。
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