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「あれが水の精霊だと?体の色さえ気にしなければ普通の人間じゃねぇか」
風の精霊は鳥、土の精霊は巨大な土の塊。
今までに相対してきた精霊たちは人間とはあまりにかけ離れた姿をしていた。
「なんか、戦いづらいな」
確かにウンディーネはあどけなさの残る少女の姿をしている。
戦いづらいという稔の言い分はもっともだった。
「見た目が何であろうと精霊は精霊。敵であることに間違いないわ」
「そうです。高橋君は見た目が女の子なら何でも構わないんですか?」
「……なにこの言われよう」
女性二人にぴしゃりと言い付けられ、稔は萎縮した。
『ふぅーん。面白そうな人たちね』
そんなやり取りを見ていたウンディーネは楽しそうに目を細めた。
『火のエーテルに、風のエーテルに、水のエーテルに……』
面々を一人ずつ眺めるウンディーネは、一番最後に優一を見た。
『無を持つ人、ね』
深蒼の瞳の奥に、ただならぬ色が映える。
『シルフとノームがお世話になったみたいだね。あなたが一番面白そう』
それは獲物を前にした猛禽類の目。表面上は穏やかだが、隙あらば鉤爪で喉を引き裂く。
「だったらどうする?俺を殺すか?」
鉤爪の先端を喉に突き付けられてもなお、優一は動じない。獲物たりえる鼠は、時としてフクロウを齧り殺す。
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