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優一の言う作戦とは、実に簡単なものだった。
風のエーテルを持つ操の魔法を使い、優一ら四人の周りに空気のヴェールを作り、水中に飛び込む。
あとは水中で直接ウンディーネを叩く。
「……それだけ?」
肝心のウンディーネを叩く部分が欠けている。
操が戸惑うのも無理はなかった。
「それだけって他に有効な手段が見つからない。お前は何か案があるのか?」
「いや……」
水中という舞台は、人間にとって大きなハンデである。
地上ほど身軽に動けるわけではないし、体力も奪われる。そして何より、呼吸が出来ない。
それらのハンデを少しでも軽減させるために、優一は風の魔法を使おうと言っているのだ。
頼りにされることは嬉しい。
しかし。
「大丈夫なの?」
一抹の不安が残る。
四人の人間を空気で包み込んで移動する。それは造作もないことだ。
問題なのは、戦力の欠如。
みんなを包み込み、移動などをさせながら攻撃にも参加する。そんな芸当、自分には出来ない。
「攻撃の一回や二回でくたばる程、俺は柔じゃない。適度に攻撃を加えながら、あっちの攻撃は吸収してやるよ」
だから心配するな。
優一は力強い眼差しで操を見た。
「他に方法がないんじゃ腹を括るしかないか。火のエーテルが水のエーテルにどれくらい通用するのか、試してやろうじゃねぇか」
水中は意味なさそうだけどな。
そう付け加えて稔は肩をすくめた。しかし、その顔には闘志が漲っている。
「私も出来るかぎりお手伝いします。太刀打ち出来るかは分からないけど」
千歳は自信がないようだが、彼女が誇れるぐらいの力を持っていることを、操は知っている。
「……ありがとう」
頼りになる仲間たち。
この人たちが後ろに居るなら、何もかも大丈夫。先の不安を吹き飛ばし、自信が湧いてくる程に心強い。
「私は攻撃に参加出来ないけど、みんなを守れるように頑張るから」
この自信がエーテルにも力を与えてくれますように。
操は三人を自分の周りに集めると、目を閉じて精神を集中させた。
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