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「そうだ。俺たちはウンディーネの体内に飛び込んだも同然。多分手を出してこないのは、奴が俺たちの驚くさまを見て楽しんでいるからだろうな」
それはつまり、いつ、いかなる時、どこからでも攻撃を加えられるということ。
水圧を操って圧殺することも、水流を作り出して水底に引きずり込むことも、地上に吐き出すことも出来る。
ウンディーネの気分次第で、自分たちの運命が決まる。
「なんてこった……」
稔は戦慄した。
操も千歳も、青ざめたような顔色をしている。
「しかしまだ悪い知らせが――!!」
優一が突然左に向いた。
「潜れ!全速力!」
「えっ――!」
操も同じ方を見た。
何かがこちらに向かってきている。発射された魚雷のように、尋常ではないスピードで。
「くぅっ!」
急いでエーテルを操り、空気の部屋を急降下させる。
「うわぁ!」
「きゃっ!」
「ちっ!」
この空間は静止したエレベーターのようなもの。
物体は何か力を加えられない限りそこに居ようとする。エレベーターが突然急降下した時、人間はその動きについていくことは出来ない。
稔と千歳は天井に張り付けられ、優一は天井に手をつくことで何とか凌いだ。
「うわっ!」
「きゃあっ!」
動きが止まると、稔と千歳は重力に従って落下した。
「くそ。こうなることは予想していなかった!」
慣性の法則。
少し考えればすぐに分かったこと。優一は自分の考えの浅はかさを恥じた。
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