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「な、なによ。あれ」
操が高速で迫ってきたものを見上げていた。
それは透き通った魚のようなもの。全長は一メートルくらい。両顎が觜のように鋭く突出している。
「……『ダツ』って魚だな。あの口で貫かれたらひとたまりもない」
一撃目を外したダツは獲物を求めるように徘徊を始めた。
「いたた……」
千歳が尻をさすりながら立ち上がる。
「痛ぇな畜生!おい優一、ありゃなんだ?」
散々な目に遭った稔は、徘徊を始めたダツを忌々しげに見上げた。
「多分ウンディーネの攻撃だ。水を操って作り出したんだろう」
恐らくノームが作り出したゴーレムと同じようなもの。水中を自在に動き回る魚は、地の利と相まってゴーレムよりも質が悪かった。
「だったら吸収してくれよ。移動しなくたって出来るだろ?」
相手の魔法攻撃を吸収するのが「無」。相手が飛び込んでくる瞬間、それに合わせて空気の膜に手をつけば問題ない。
「……すまん。今回ばかりは、ちょっと吸収出来そうにない」
しかし優一はそれをしなかった。否、出来なかったのだ。
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