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「左から敵!」
「右からも来ています!」
「了解!」
稔と千歳のナビに従って空気の波動を飛ばす。
投げるというよりは押し出す感じだ。操の作り出すヴェールを突き抜けると一瞬にして広範囲に広がり、圧倒的な衝撃で敵を粉砕する。
優一の波動が突き抜けても水が侵入してこないのは、ひとえに操の尽力があるからだろう。
「前から来るぞ!」
「二体です!二体来ます!」
稔と千歳はナビ役に撤していた。今の四人は稔が右、千歳が左、優一が後ろと上下を引き受け、その中心に操が鎮座する、というフォーメーションになっていた。
エーテルの動きに一番過敏に反応出来る優一が、一番見落としやすい後方と上下に睨みを効かせ、稔と千歳がそれぞれ左右及び正面を担当し、操は空気の膜の維持と移動に撤する。
適材適所とも言える陣形だ。
「うらぁ!」
優一の攻撃が操の横を通過する。顔のすぐ横を通過し、髪がなびいて風圧が殺到する。しかし、それでも操はじっと目を瞑り、精神を乱すことはない。
優一の攻撃が絶対に当たらないと信じているから。
「くそ。遊んでいやがるな」
正面から迫り来る魚を撃破した優一は、苦々しげに舌打ちをした。
現在の四人は竜巻の中心に居るような状態だった。皆の周りを大きさも形も様々な魚が旋回している。その量たるや、水面近くから水底に到るまで。
「つくづく性格の悪い野郎だ」
実に様々な魚が襲ってきた。
イワシのような小型の魚やマグロのような大型魚、リュウグウノツカイに似たものも居た。まるで水族館の大水槽に放り込まれたような気分である。
しかし共通しているのは、二体以上で迫ってくることがないという点。それは優一が両手を振り回して対応出来る数。手の平から発射出来る波動には限界がある。
これだけの量の従者を一斉にけしかければ、まばたきをする間もなくケリをつけることが出来る。だが、ウンディーネはそれをしない。
四人が無様に動き回る様を笑っているのか、弄びいじくり回して遊んでいるのか、じわじわとなぶることを楽しんでいるのか。
何にせよ、気持ちいいものではない。
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