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『あはは!なかなかしぶといじゃない!』
ウンディーネの声がこだまする。
『復活して早々、好敵手が現れたわね。あなた達を噛み砕くにはなかなか骨が折れそう!』
「やろうと思えばすぐ出来るのにな。気に入らねぇ」
稔が音を立てて歯を食い縛る。
水中でも自分の力が通じると思っていたが、それはとんだ奢りだった。水の精霊の前では、彼の力は悲しいまでに無力。
それがたまらなく悔しかった。
「……性悪ですね。最低です」
その気持ちは千歳も同じ。
水の中といえば彼女の独壇場。呼吸さえ出来れば、あとは何も心配しなくていい。
しかし現実はどうだ。ウンディーネの支配の前では全く歯が立たない。水が言うことを聞いてくれないのだ。
力になりたいのに、ただ足を引っ張っているだけ。
それが本当に堪らない。
「さて。どうしたものかね」
さっきまでの感情を押し殺し、優一は打開策を考える。戦いの場で大切なことは、とにかく冷静に考えること。感情任せの行動は墓穴を掘るだけだ。
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