青く透き通る悪魔

24/59
前へ
/396ページ
次へ
見えない敵と戦う。これは全く想定していないことだった。敵なのは、今自分の身を取り囲んでいる水すべて。 それをどう駆逐するか。 (……蒸発させる) あまりに無謀。 たしかにエーテルの量は十分であるが、この水を一撃で蒸発させるだけの量ではない。 それに、皆がいるこの状況では出来るはずがない。 「上!」 急速潜行してきたタチウオを粉砕する。 波動を受けた魚はバラバラに飛び散るが、死んだわけではない。元はただの水。散ったところで水に戻るだけなのだ。 加えてここの水はウンディーネの支配下にある。たとえ四散しても、また再凝固させればいいだけのこと。 倒せども倒せども魚の数が減らないのはそのためだ。 「……ちっ」 周りを旋回する魚の向こう側。そこにウンディーネが居ないものか。皆に背を向けて目を凝らす。無駄な行為だとは分かっている。やはりウンディーネの姿はない。 (何とかしないとな) 自分はまだいけるが、稔と千歳はかなり疲弊しているはず。戦闘に参加出来ないだけでなく、急降下急上昇、そんな動きにさっきから付き合わされているのだ。 とすれば、まずは脱出することが先決――。 「ん?」 一瞬、視界に霞が掛かったような気がした。水は透き通っているし、操のお陰で視界を阻むものはない。 (気のせいか?) また、視界が霞む。 最初は目の異常かと思ったが、さっきから霞む周期が段々と早くなっている。 異常があるのは目ではない。 周りを囲む、空気のヴェールだ。 「はぁ……はぁ……」 うしろで荒い呼吸音が聞こえた。
/396ページ

最初のコメントを投稿しよう!

90797人が本棚に入れています
本棚に追加