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周りを回っている魚たちはさっきからずっと手を出してこない。ただただ泳いでいるだけ。
まるで、水中であたふたしている四人を、馬鹿にしているかのようだ。
従者は主に似るのだろうか。意志のない水の魚は、ウンディーネのエーテルに染められている。
「こちらが動きだすのを待っているのか?」
優一は風の部屋を水底に移動させていた。
足下に地面さえあれば、少なくとも下方からの攻撃は心配しなくていい。
操を休ませるためには、少しでも安全な場所に移動する必要があった。
「……喉、乾いたわね」
操の顔色はだいぶ良くなっていた。呼吸も落ち着き、今は普通に喋れるぐらいまで回復している。
「外に出れば水がたくさんあるが、出てみるか?」
「あんたが行くんなら付き合ってあげる」
こうして優一の軽口にも答えられる。端から見れば回復しきっているようだが、実際のところ、疲労はそれほど軽くない。
(さて、どうしたもんかね)
今戦えるのは優一ひとり。千歳も稔もやる気は十分。しかし、攻撃は物理的に無理である。操は言わずもがな。
今襲われたら窮地に立たされているところだが、敵はまだ動かない。
(性格が悪くて助かった)
もっとも、その「まだ」がいつまで続くか分からないのだが。
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