青く透き通る悪魔

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『ん?なんか変な動きをしてるわねぇ』 遠くから響きくる声。 それを合図に、旋回を続けていた魚たちが一斉に動き始めた。 塔が崩れ、魚たちが水面近くで横一直線に並ぶ。まるで優一たちを覆い潰すような形になった。 『逃げようったってそうはいかないんだから!』 そして停止。 狙うは水底に陣取る、四人の人間。 「どうするよ?上を塞がれた」 忌々しげに稔が言う。 「問題はない。最初から反撃は想定していた」 優一の顔から笑顔が消える。そして、肩越しに三人の顔を見た。 「正面から突破する。とりあえずスピードを出すから、各自衝撃に備えてくれ」 「了解」 「分かりました」 「うん」 三人の返事を聞くと、優一は口元に笑みを浮かべて正面に向き直った。 「行くぞ!」 瞬間、風の空間が爆発的な加速をする。 「くぅっ!」 操の顔が苦痛に歪む。 襲いくるはGの嵐。体が後ろの壁に押しつけられる。このまま潰されてしまうような感覚さえ覚える。 胸が苦しい。呼吸がうまく出来ない。 他の二人も一様に顔を歪めていた。 『あはは!気でも狂ったのかしら?』 魚たちが矢のように降り注いでくる。正面から一点集中というわけではない。 左右に広がりながら、優一たちを囲むようにして迫ってきた。 「させるか!」 衝突。 それと同時に、水中が震える。 迫ってきた魚たちはあっという間に微塵と化した。 「いっけええええ!!」 数にものを言わせて迫ってくる魚は、空気の膜に触れることさえ叶わない。触れる手前で消し飛ぶ。 風の空間は、魚の群れを切り裂くように飛翔を続ける。 彼らは恐れを抱いているのだろうか。 鬼神の如き形相をした、優一の姿に。
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