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「きゃあ!!」
悲鳴が穏やかな空気を切り裂いた。
「操っ!?」
振り返ると、操の腰には小さな手が回されていた。その手は操の両腕の上から抱きつくように回されており、操の動きを完全に封じている。
『甘いわねぇ。ここはまだ、私のフィールドなのよ?』
背中から顔を出すウンディーネ。無邪気とは程遠い凶悪な笑みを浮かべている。
「放して!放しなさいよっ!」
操が拘束から逃れようともがき暴れるが、それでもびくともしない。
おそらく操の後ろ蹴りを何発か貰っているはず。しかし、全く動じる気配がない。
「操さん!」
「くそったれが!」
千歳と稔が同時に魔法を発動させる。千歳は手のひらの水をニードル状に形成し、稔は金色の炎を人差し指からたぎらせる。
二人の狙いはウンディーネの顔。共に魔法の使い手としては一流。
外すことはまずありえない。
『動くなっ!!』
どすを効かせたウンディーネの声。今までの人を馬鹿にした口調とは違う。顔からも笑みが一瞬のうちに消え失せ、黒い光を宿した瞳が構える二人を射抜いた。
「うっ……!」
稔はうめき声を上げ、千歳は怯えた表情で動きを止める。
今までとは明らかに雰囲気が違う。空気が凍り付くような静寂が流れる。
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