青く透き通る悪魔

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『あなた達、自分がどんな状況に置かれているのか、全然分かってないわね?』 厳しい表情から口の端を吊り上げ、ウンディーネの腕が絞まる。 「きゃあ!!」 操は悲鳴を上げた。骨が軋む苦痛に歪む顔。 ウンディーネは万力のような力で操を絞め上げていた。 『この娘が壊れてもいいの?もう少し力を入れれば背骨が砕けるわよ?』 答えの分かっている質問をあえて投げ掛けてくる。 「ど畜生が……」 迷っている暇はない。 稔と千歳はエーテルを拡散させた。 『そうそう。素直な子は嫌いじゃないわ』 その姿を満足気な表情で見届けると、ウンディーネは腕の力を緩めた。 「――はぁっ!はぁ……」 息が詰まるような苦痛から解放され、操は肩で息をする。ウンディーネの支えがなければ前のめりに倒れてしまいそうな程に体を曲げている。 「……操を放せ」 優一が静かに言い放った。 「お前の目的は俺のはずだ。そいつは何も関係ない。俺が身代わりになるから、そいつを放せ」 握り締めた拳が震えている。敵地で油断を見せてしまった間抜けさ、ウンディーネの動きを読めなかった腑甲斐なさ、敵に懇願することの悔しさを抑えているようだった。 「馬鹿!そんなこと言ったらあなたがきゃあ!!」 『あなたは黙ってなさい』 喚く操を力で黙らせ、ウンディーネは優一を見る。 『そうねぇ。それもいいかもしれない。だけど、それだけじゃつまらない』 それは一瞬の出来事だった。 『悔しかったら力ずくで奪ってみせなさい?可愛い騎士(ナイト)様?』 そんな言葉を残し、ウンディーネは身を翻して水中に消えた。無論、操も一緒に連れて。 あまりに唐突な行動。 一瞬、何が起こったのか理解出来なかった。 「馬鹿野郎がっ!!」 水面を叩く音で思考が舞い戻る。それと同時に、優一は池に向かって走り始めていた。 「待て優一!一人でなにし――」 背後で稔が何か叫んでいたようだが、飛び込む水の音で掻き消され、最後まで聞くことは出来なかった。
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