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「うわっ」
水中の様子を見て稔が声を上げた。
先の戦いとは段違いの数の魚が泳いでいたからだ。
いや、泳いでいるというよりは暴れているといった方が正しいかもしれない。まるで気でも狂ったかのようだ。
「一体何が起きたんだ?」
「さぁな。ウンディーネが暇潰しでもしていたんじゃないか?」
魚の根源はウンディーネのエーテル。彼女の意志如何でいくらでも魚を生み出せるし、操ることも出来る。
彼女の性格上、暇潰しに魚を狂ったように踊らせて遊んでいるという可能性も十分ありえる。現にさっきから間近を通り過ぎることはあるが、攻撃してくる気配はまったくない。
ここは彼女のフィールド。二人が飛び込んだことに気付かないはずがない。
やはり遊んでいるのだろう。
「まぁいいや。で、どうするんだ?」
魚が風の膜をかする音を聞きながら、稔が質問する。
「どうやってウンディーネをぶっとばす?まさかここの水を蒸発させるとか言わないだろうな?」
最初は冗談のつもりで言った。だから笑い飛ばそうと思った。
「いや、そのまさかなんだけど」
「……なんだって?」
しかし優一の言葉を聞いて笑うに笑えなくなった。
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