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「さて、お前の処遇についてだが」
優一は相変わらず冷めた目でウンディーネを見下ろしている。
「地上に引きずり出してなぶり殺しにする予定だったが、面倒くさくなった。だからここで殺す」
体に触れた空気の膜から伝わってきたのは、死の匂いのする冷たい声。
「手足の一本一本からひきちぎってやりたいところだけど、安心しろ。一瞬でケリをつけてやる」
見下ろす目と同様に、何の感情も籠っていない。まるで機械のような声だ。
『人間ごときが私を殺せると思――』
「うるせぇよ」
優一が足を踏み鳴らす。
足下の空気が小さく振動する。
それは衝撃波となってウンディーネの体にのし掛かる。かつて魚を破砕した時と同じもの。無論、ウンディーネがそれぐらいで倒れるわけがない。しかし、黙らせる程度の苦痛は与えられる。
『かはっ!!』
「優一、やるんなら早くやっちまおうぜ。いつまでもこんなところに居たかねぇよ」
苦痛に歪むウンディーネの顔を見ながら、稔は静かに言った。
「そうだな」
友の声に呼応し、優一は火のエーテルを展開させる。同じく稔もエーテルを発現する。
二人の居る空間は、瞬く間に燃え盛る炎の塊となった。
『ううっ……!』
ジリジリと焼かれる自分の体。今までに感じたことのない苦痛。
熱い。
ひたすらに熱い。
しかし、それは致死量には至らない。
逃れることも出来ない。
水の精霊ウンディーネは、初めて弱々しい声を吐いた。
『た……たすけ――』
閃光。
それは精霊を葬り去らんとする灼熱の光。
ウンディーネの声は、誰にも届かなかった。
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