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「はぁー……」
しばらくして、優一が盛大なため息をついた。肩ががっくりと落ち、まるで生気まで吐き出しているようだ。
「どうしたの?」
「疲れた。とにかく疲れた。帰って寝たい」
優一は気だるそうに両の肩をぐるぐる回した。
「お前にも悪いことしたな。散々な目に合わせちまって。俺にもっと力があれば、もう少しうまく立ち回れたんだが」
かったるそうな声から伝わってくる、明確な謝罪と反省と、自責の念。
面と向かって言うのは恥ずかしいから、あえてこんな口調で言っているのだろうか。
まったく素直じゃない。
それが操には、どこか可愛らしく感じられた。
「気にしてないわよ。たしかに死にかけたのはちょっと怖かったけど……」
優一と稔が戦っている間、千歳が訊いてもいないのに色々なことを話してくれた。
自分が三途の河のほとりに居たとき、優一は一体何をしていたのか。何をしてくれたのか。
聞く限りでは、優一はかなり必死だったらしい。
優一が自分のために必死になってくれた。
不謹慎かもしれないが、それはとても嬉しいこと。
「でも、優一は助けてくれたじゃない?それで十分よ。だからそんなに自分を責めないで。私が居心地悪くなっちゃうわ」
操の声は柔らかい。
まるで空から降り注ぐ月明かりのように、ふんわりと。
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