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「まぁその……なんだ。生理現象っていうやつさ。さすがに俺でも防ぎようがないっつーかなんつーか」
『……』
無言のプレッシャー、というものだろうか。
言い繕うにしてもまったく効果がない。それどころか、墓穴をどんどん掘り進めていっているような気がする。
言えば言うほど空気がはりつめ、優一はとうとう耐えられなくなった。
「うん。ごめんなさい」
朝のベランダで、携帯電話を片手に頭を垂れているという姿は、滑稽以外の何物でもない。
『……ぷ。あは、あははは!』
てっきり怒っているものだと思っていたが、電話の向こうの千歳は、なぜか噴き出して笑い始めてしまった。
『あはははは!塚越君らしいですね!私が話すのと同時にくしゃみを重ねてくるなんて!』
一体何がツボにはまったのだろうか。考えてみても、優一は首を傾げるばかり。
しかしこうも笑われると、何だか馬鹿にされているような気がして心外である。
「だから生理現象なんだってば!そんなに笑うことはないだろう?」
『す、すみません。でも、緊張していた私が、何だか馬鹿らしくて。あはは!』
むっとした口調で話してみてもなんの効果もない。
その後千歳はしばらくのあいだ、ころころと笑っていた。
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