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『はぁ、はぁ。すみません。取り乱しました』
「うん。ま、俺が悪かったんだけどさ」
千歳は冷静さを取り戻したようだが、呼吸はまだ荒い。
けっこうな時間を笑い転げていた彼女のおかげで、優一の体はすっかり冷え込んでいた。このままではまたくしゃみが出てしまう。
「で、用事ってのは?」
そそくさと部屋に入り、ファンヒーターのスイッチを入れる。
『えっと……その、ですね』
緊張はほぐれたようだが、千歳はまだ逡巡しているようだった。
「うん」
やはり重大なことなのだろうか。優一は型の古いファンヒーターに火が点くことと、千歳の言葉を辛抱強く待った。
『あ、あの!』
突然、千歳が上ずった声をあげた。
『今日もしお暇なら、私と遊びに行きませんか!?』
瞬間、ファンヒーターにも火が点った。
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