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「さてと、これからどうしようか?」
千歳がポテトを食べ終えるのを見届けてから、優一は残ったコーラを一気に飲み干した。
「そうですねぇ。行きたいところがあるので、ついてきてもらえますか?」
「ん。構わないよ」
今後の予定も決まったところで二人は席を立ち、後片付けをして店を出た。
「うわ。寒っ」
途端に冷たい風が襲い掛かってくる。
「そろそろ冬本番って感じかな?」
「そうですね。今年の初雪ももうすぐです」
駅前通りから一本隣に移ると、そこは様々な店が軒を連ねる商店街になっている。
ファッションに食料、レストラン、喫茶店、家具、家電。ここを散策しただけで一日が終わってしまいそうなほどだ。
週末ということもあり、ここもまた人が溢れている。
「行きたいところってのは?」
その人混みの中を、他愛のない話をしながら二人は歩く。
「可愛い小物が売っているお店ですよ。女の子にはけっこう有名なお店です」
人混みではぐれないように歩調を緩めながら、優一は千歳の隣を歩いている。
何気ない、ほんの少しの気遣い。
その優しさが、千歳は嬉しいと感じる。
「可愛い小物?どうにも俺が行くようなところじゃない気がするな……」
「大丈夫ですよ。男の人もプレゼントにって、けっこう買ったりしてますから」
千歳の胸にはある目論みがあった。
それは成就されるか分からない、微かな微かな希望。
しかし、それ以上のことは望まない。それが叶えば、自分は満足。
大げさかもしれないが、それを糧に全てを精算出来ると思う。
(大丈夫。彼ならきっと――)
人混みの中をゆっくりと歩く。
目的の場所は、もうすぐ。
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