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文房具にさしてこだわりなどを持っていない優一にとって、可愛らしいキャラクターが描かれていることが買う理由にはならない。
もちろんこれは感覚の問題。こだわりがある人間と、とりあえず使えればいいという人間の違いだ。
差し当たり、大したことではない。
目下優一が気にしていることといえば、千歳がどうしてここに来たのか、ということ。
「あ、これ可愛い」
そういって彼女はファンシーな文房具を手に取って見ている。
「こういうのって、見てるだけでも楽しいですよねぇ」
そう言って小物売り場に移動する。
楽しい、という気持ちに偽りはないだろう。千歳は本当に楽しそうな顔をしている。だが、こういうことがしたくてここに来たのかといえば、それは違うような気もする。
(言いにくいことなのかな?)
もちろん、それに不満があるわけではない。
普段入れない場所に入れることや、普段見ることの出来ない友達の姿を見られることは、とても新鮮で楽しい。
しかしせっかく遊びに来たのだから、遠慮は不要だとも思う。
(もっとオープンに……ん?)
そこでふと、彼女の手が止まっていることに気がついた。
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