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「……へ?」
しばしの沈黙の後、優一は間抜けな声を上げた。
「だ、だから、その。せっかく遊びに来たんだから、なにか記念になるものをと……」
しりすぼみになっていく千歳の声。
勇気を出した果てに真っ赤に染まってしまった顔からも、どんどん色が落ちていく。
決意に満ちた表情が一変、今度は失意の波が押し寄せてくる。
「……やっぱりいいです。迷惑ですよね。こんなの」
拗ねているのか、自分の不甲斐なさを悔やんでいるのか。
千歳はしゅんとして下を向いてしまった。
「や、ちょ!待った待った!!」
優一が両手をぶんぶんと振りながら取り繕う。
「早合点のしすぎだよ。俺は迷惑だなんて一言も――」
「やっぱり強引ですよね。初めて遊びに来たのに。私ってダメですね」
「うわ、聞いちゃいねぇ」
ネガティブの深層にどんどん潜り込んでいく千歳。
「まいったなぁ……」
といって、頭を掻いてるわけにもいかない。
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