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彼女には自分を責めてしまう節がある。
今回の場合、千歳はかなりの勇気を振り絞って先の提案をしたと思われる。少し反応が遅れてしまったが、それは驚きからきたものであって他意はない。
まして迷惑などと誰が思うのか。
それを分からせる必要があった。
「あーもう。あんまりやりたくないけど」
ため息をひとつ。
優一は右手を開き、指の間を詰めるように閉じた。
「ちょっと失礼」
そして、その手を振り下ろし、下を向いた千歳の頭にチョップを喰らわした。
「いたっ!」
驚いた千歳が顔を上げる。
「な、なにするんですか!?」
頭を押さえて軽く涙目になっている千歳に、優一は優しく諭すように言う。
「早合点はいけないよ、立花さん。俺は迷惑なんて微塵も思っちゃいない」
掛けられたキーホルダーを二つ、指でつまみ上げる。
「だからそんなこと言わないの。むしろ誘ってくれたお礼に、俺が奢りたいぐらい」
「え……」
『奢る』という言葉に、千歳は即座に反応した。
「いいんですか?その……私の勝手なお願いなのに……」
「うん?買わない方がいい?」
「そ、そんなことは!!」
はち切れんばかりに首を横に振る千歳。
その反応を楽しむように、優一は喉の奥で笑っている。
「だったらいいよね。俺が買っても」
「……塚越君はいじわるです」
千歳は拗ねたような声を上げた。
「こういう性分だから仕方がない。それに、俺にも女の子に何か買ってあげるぐらいの甲斐性はあるから。さて、レジはどこ?案内よろしく」
優一は軽く千歳の肩を叩いた。
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