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それこそが、彼をここに連れてきた目的。
とっておきの場所で。
とっておきの景色のなかで。
自分の想いを伝える。
それが、自分の理想だった。
「ん?なに?」
彼がこちらを向く。
二人は向き合うような形になる。
「突然、こんなことを言うことを許してください」
思わず下を向いてしまった。
このままではいけない。
笑いそうな膝に力を込める。
震えそうな手をしっかりと握りしめる。
裏返りそうな声を、なんとか振り絞る。
「単刀直入に、言います」
顔を上げて、彼の顔を見つめる。
「塚越く……いいえ。私は、優一君のことが、好きです」
とめどなく溢れてくる、想い。
「私を変えてくれたのは、あなたです。どうしようもなかった私に救いの手を差し伸べてくれたのは、あなたです。あなたはどこまでも優しくて、格好よくて……。ずっとずっと、あなたのことが好きでした。望めるのなら、あなたの隣を、私は歩いていきたい」
飾らない気持ちを、飾らない言葉で。
答えを聞くのは、正直怖い。
だけど、聞かなければならない。
それが、自分なりのけじめだから。
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