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可能性は、とても少なかった。
それにすがった自分は、あまりにも馬鹿だったのだろうか。
いや、そんなことはない。
いつかは伝えなければならなかったことだった。それがたまたま、今日だっただけで。
明日伝えても、明後日伝えても、来年伝えても、結果は同じだったと思う。
彼の気持ちは、既に揺るぎないものになっている。
名前で呼んだ時だって、一瞬だけ目を大きく見開いただけ。
名前で呼んでほしいと遠回しに言ってみても、彼は動揺すらしなかった。
要するに、最初から勝ち目はなかったのだ。
可能性はあくまでも可能性。万馬券を当てることなんて、そうあることではない。
彼の気持ちはぶれることはない。今までも。これからも。
しかし、後悔はしていない。
決して。
絶対に。
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