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明くる月曜日。放課後。
優一は学園の屋上に来ていた。
今日は少しだけ、風が強い。
「ふう」
落下防止のフェンスに体を預ける。
軋むフェンスの音に耳を傾け、今日一日のことに思いを走らせた。
「変化はなし、か」
顔を合わせるのは気まずい、という気持ちがあった。
しかし、千歳はいつもと変わらず「おはようございます」と挨拶をしてくれた。
それで気が楽になったというか、気まずいという気持ちは消え失せてしまった。
そのあとも、操とも普通に接していた。本当にいつもと変わらない。
まったくもって普通。
「女の子って強いんだな」
そんなことを言っては失礼だろうか。
多分、ひどいことをしたと思う。でも、それでも素直に接してくれる彼女を、本当に強いと思った。
「よぅ!待たせたな」
鉄製のドアが重い音を立てて開き、稔が姿を現した。
今日、ここに来たのは他でもない。話があると稔に呼び出されたのだ。
「呼び出した奴が遅刻してたら世話ないぞ」
「仕方ねぇだろ。みみっちいこと言ってると嫌われるぜ?」
軽口を叩きながら歩いてくる稔もまた、いつもと変わらない姿。
「で、お前はどこまで知っている?」
稔が隣に来たのを見計らって、優一は口を開いた。
こんなところに呼び出した理由など、他に見当たることがない。
優一は単刀直入に訊いた。
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