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(これで、よかったんですよね)
千歳は一人、思いのたけをぶつけた場所に来ていた。
振られたことによるショックだってまだ残っている。
だけど、気分はどこか晴れやかだった。
彼が自分に与えてくれたもの、それはこの世の何にも変えられない、かけがえのないもの。いつか「こんなこともあったね」と、笑顔で話せる日が来れば、それでいいと思う。
(今度は、あなたの番ですよ)
ライバルから、今度は応援する立場へ。
競争には負けてしまった。だけど、友情は変わらないと思う。
しかしだけど手助けはしない。それはほんの少しの意地悪心。
だって、大好きだった彼を奪ったのだから。
「頑張ってくださいね!私もこれから、頑張りますからー!」
姿の見えぬ友達にエールを贈るように、千歳は町に向かって声を張り上げた。
彼女の鞄には、『T』を型どったキーホルダーがぶら下がっていた。
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