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「失礼します」
いつものようにノックもなしに錬金学研究室に入る。
優一を霧払いに、後に三人が続いた。
「夏休みに片付けたのにもうこんなに散らかってる……」
操がうんざりした口調で言った。
ここは研究室というだけのことはあって、高価な実験道具なども多数取り揃えられている。
万が一服に引っ掛けて床に落としでもしたら、高校生の小遣いでは到底払えないぐらいの額が請求されるだろう。
そんな高価なものを好き放題散らかしている明子が、そのようなことを気にするとは考えられないが。
「水野先生、来ましたよ」
手慣れた手つきで雑然とした通路に道を作っていき、優一は明子の座るデスクに到着した。
「ああ、来たか」
椅子をくるりと回し、明子がこちらを向く。
「とりあえず、全員そこに並べ」
口調に怒気が含まれている。表情もどこか険しい。
いつも違う明子の様子に戸惑いながらも、四人は言われた通り横に整列した。
「……校長から聞いた話だが」
明子は一拍置いて、
「お前ら、精霊退治とやらをやっているらしいな」
その眼光は鋭く、四人は沈黙するしかなかった。
「正しかったのか……」
沈黙を肯定と解釈し、明子は深々とため息をついた。
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