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「怪奇現象の調査をうちのクラスの生徒にやらせるとまでは聞いていたが、どうりでその後の報告がないわけだ。なんで生徒にそんな危険な真似を……」
独り言のように呟き、明子は頭をガシガシと掻いた。
「知らなかった……んですか?」
震える声で、操が言った。
「当たり前だろう。知っていたら全力で止めていた。あの人ならそんな危険な真似はさせないと思っていた。お前には悪いが、どうやら過信だったようだ」
その怒りは、優一らに向けられているものではなかった。
教師であるにも関わらず生徒を危険な目に合わせていた、校長である桐生明仁に向けられたもの。
「で、でも……。校長先生は結界を張っていたと……」
「はん。たかが人間一人の結界で、精霊たちの動きを封じられると、本気で思っているのか?」
千歳の発言を、明子は無情にも一刀両断した。
「あいつらがここに執着している理由は、エーテル界がこの土地にある。ただそれだけだ。あいつらはエーテル界そのものを封印から解こうとしてるんだよ」
もともと精霊はエーテル界の住人。その封印を解き、本来あるべき姿に戻す。
しかし、それには明神学園という障害があった。だから精霊たちはここに留まっている。
明子の話はあくまで推測でしかなかったが、結界を破ってなお留まっていた精霊がいたのも事実。
考えられない話ではなかった。
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