焔の帝

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「たしかに結界が張ってあるのは事実だが、多分目隠し程度の効果しかないだろう。近隣に被害が出なかったのは、正直奇跡としか思えん」 明子が言葉を発するごとに、皆の中の明仁像がどんどん崩れ去っていく。 「昨日の放課後呼び出されてことの顛末を聞いた。この土地にエーテル界なんてのがあることにも驚いたが、私は詰め寄ったよ。どうしてこんなことをさせたのかと」 明子の握り締めた拳が、小刻みに震えていた。 「『仕方がなかった。私の力では、どうしようもなかった』とさ。教師にあるまじき態度だ」 「でも、校長先生は教育の一貫であると……」 まるで助けを請うような表情で稔が言った。 「そう言えば、お前たちは素直に言うことを聞くだろう?本来なら私たち教師が対処すべきこと。だが、対処に当たったら授業に支障が出る可能性がある」 しかし、それすらも明子は切って捨てた。 「だから自分の孫娘である桐生と稀有な能力を持つ塚越、あとはイレギュラー的に加わったお前と立花に丸投げしたんだよ。私にはそうとしか思えん。授業の遅滞と生徒の命。どちらを優先すべきかは、秤にかけるまでもなく、自明のはずなんだがな」  
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