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「失礼します」
錬金学研究室に入ると、既に他のメンバーは集まっていた。
比較的片付けられたストーブの周りに集まり、優一の到着を待っていたらしい。
「遅い。お前に緊張感というものはないのか?」
明子が苦笑いをしながら言う。
「すみません。コタツが俺を離してくれなくて」
もちろん責められているのではない。
ヘラヘラと笑いながら優一もストーブに身を寄せた。
「ふぅ。あったかい」
手をかざしながら他のメンバーに目をやる。
操も稔も千歳も、皆一様に緊張しているようだった。
それも仕方ないのかもしれない。
これまで精霊に勝ってこれたのは、あくまで偶然か、勝利の女神の気まぐれでしかない。彼らは明子の話を聞いてそれを実感したのだろう。
しかし、結局は誰かがやらねばならないこと。校長の思惑がどうであれ、弱音を言ってはいられない。
(褒賞金でも出ないものかなぁ)
そんなことを考えながら、優一は明子に問うた。
「なにか変化はありましたか?」
「いや、今のところは」
一人デスクから椅子を引っ張ってきている明子は、背もたれに体重を乗せて足を組んだ。
「ずっとここに居たが、特に変化はない」
ギィ、ギィと背もたれが鳴る。
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