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「塚越は何か感じていないのか?」
「くすぶっている感覚は抜けませんけどね。今すぐに何か起きるってわけじゃなさそうです」
ここまで他のメンバーが会話に加わってこないのは珍しい。
どうやらその緊張は、優一が思っている以上のものらしい。
「どうしたお前ら?元気がないな」
問いかけるも、無言。
代わりに視線を送ってきた。
千歳は少し怯えている。
稔は柄にもなくびくついている。
「……なんであんたはそんなに能天気なのよ」
操は刺すような視線と刺々しい言葉を投げてきた。
「おっかないな。おい」
その言葉をしかと受け止め、優一はそこらの本を積み上げてその上に座った。
「出来れば骨折り損のくたびれ儲けで済んでほしいんだけどね。多分そうはならないから、腹をくくるしかない。俺だって緊張していないわけじゃないよ」
ストーブの上に置いてあるタライが、何やら音を立て始めた。中の水が切れたらしい。
「ちょっと汲んできますね」
優一は腰を上げ、足元にあったバケツを手に取った。
「気を付けろよ」
部屋を出る手前、明子はそんな声を掛けてきた。
「大丈夫ですよ」
扉を開けながら、優一はゆるやかに笑う。
「万が一不審者に襲われたところで、そう簡単には死にませんよ。俺の体は頑丈に出来てます。……多分」
そう言い残し、優一は暗闇の廊下へと繰り出した。
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