焔の帝

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何事もなく夜は更け、どんどんと時間は過ぎていく。 時刻は日を跨ぎ、丑三つ時に差し掛かろうとしていた。 この頃になると操たちも目を覚ましていた。といってもやることが特にあるわけでもなく、適当に雑談をしたりして時間を潰している。 今日は何も起きないのではないか。 稔が大あくびをかましながらそんなことをいっていたが、優一は緊張の糸を緩ませることなく、じっと外の漆黒の闇に睨みを効かせていた。 「少しは休みなさいよ」 立ったり座ったり、コーヒーを飲んだり水汲みに行ったり。そんなことをしながらも、優一は監視の手を緩めることはなかった。 見かねた操が声を掛けるも、優一の返答はこうだ。 「大丈夫。心配するな」 先ほど千歳が声を掛けていたが、同じ返答だった。 今や明子でさえも仮眠をとっているというのに、一体何が大丈夫だというのか。 しかし食い下がったところで何も生み出さない。無意味な争いを引き起こして、優一を余計に疲れさせてしまうだけだろう。 「そう……」 歯痒さを覚えながらも、操は引き下がるしかなかった。 「……」 歯痒さを覚えているのは千歳も同じ。 できれば代わりに監視の役を引き受けたいが、自分にはそんな力はない。 今できることといえば、こうしてストーブで暖をとり、彼の背中を見つめることのみ。 それがまた、たまらなく悔しかった。 それぞれが思いをめぐらせ、そうして夜は更けていく。 月に雲が掛かり、降り注ぐ光に揺らぎが生じる。 「!?」 異変を察知したのはその時。 優一の体がぴくりと反応した。
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