90798人が本棚に入れています
本棚に追加
/396ページ
何事もなく夜は更け、どんどんと時間は過ぎていく。
時刻は日を跨ぎ、丑三つ時に差し掛かろうとしていた。
この頃になると操たちも目を覚ましていた。といってもやることが特にあるわけでもなく、適当に雑談をしたりして時間を潰している。
今日は何も起きないのではないか。
稔が大あくびをかましながらそんなことをいっていたが、優一は緊張の糸を緩ませることなく、じっと外の漆黒の闇に睨みを効かせていた。
「少しは休みなさいよ」
立ったり座ったり、コーヒーを飲んだり水汲みに行ったり。そんなことをしながらも、優一は監視の手を緩めることはなかった。
見かねた操が声を掛けるも、優一の返答はこうだ。
「大丈夫。心配するな」
先ほど千歳が声を掛けていたが、同じ返答だった。
今や明子でさえも仮眠をとっているというのに、一体何が大丈夫だというのか。
しかし食い下がったところで何も生み出さない。無意味な争いを引き起こして、優一を余計に疲れさせてしまうだけだろう。
「そう……」
歯痒さを覚えながらも、操は引き下がるしかなかった。
「……」
歯痒さを覚えているのは千歳も同じ。
できれば代わりに監視の役を引き受けたいが、自分にはそんな力はない。
今できることといえば、こうしてストーブで暖をとり、彼の背中を見つめることのみ。
それがまた、たまらなく悔しかった。
それぞれが思いをめぐらせ、そうして夜は更けていく。
月に雲が掛かり、降り注ぐ光に揺らぎが生じる。
「!?」
異変を察知したのはその時。
優一の体がぴくりと反応した。
最初のコメントを投稿しよう!